月刊『望星』にインタビュー記事が掲載されました。
月刊『望星』 考える人の実感マガジン 2019年5月号
「望星インタビュー この人の”実感”を聞きたい」のページに、代表取締役是枝嗣人の記事が掲載されました。
タイトルは、「葬送文化と地域のつながりを守りたい」
インタビュアーは、丸山純さん。
昨年、丸山さんのご親友の奥様がお亡くなりになり、弊社でご自宅葬を施行させていただいたご縁で、このインタビューが実現しました。
お仕着せの葬儀ではなく、「その人らしさ」をいかに表現するかにこだわって、どんどんアイデアを出してくる。
こんな葬儀屋さんもいるのかと、丸山さんは驚いたのだそうです。
内容を抜粋してお伝えします。
その人らしさを表現する葬儀
死別体験で湧いてくるさまざまな感情や思いを外へ出せなくて内に閉じこめている状態、それを英語で「グリーフ(grief)」と言います。
遺された家族たちの心の傷をどうサポートしていくのかも、大きなテーマになってきました。
その人らしい、心のこもったお葬式ができれば、ご家族がわりと早くグリーフによる悲しみと折り合いをつけて元気になられる例を多く見てきました。
丸山さんのご親友が喪主を務められたお葬式には、お二人の広い交友関係から大勢の会葬者が集まり、あのご夫婦らしい、いいお式になりました。
葬儀って、自分が知らなかった故人の人生を共有する場でもあるんですね。
そうやって、悲しいのは自分だけではないと気づき、お互い感情を表に出して受け止めてもらうことも、グリーフサポートという観点からはとても大切だと思います。
大学三年で飛び込んだ葬祭業界
立正大学の仏教学部に入学し、茶道部に入部したんです。
三年になって将来を考え始めて、仏教の知識と茶道のおもてなしの心を活かすのに、ふと葬儀の仕事はどうだろうと思い浮かびました。
時代で変わっていく葬送文化
今はほとんどの葬儀を葬儀屋が手がけていますが、もともとは葬儀屋ではなく葬具屋、葬式に使う道具などのレンタル業だったんです。
葬儀をあげる家は何もしない。嘆き悲しむのが仕事ですから。
隣組と呼ばれるご近所同士による、地域葬儀が自宅で行われていました。
それが、高齢化で町会が機能しなくなったり、人間関係が希薄になったり、バブル期に会葬者が増加したことなどから、自宅ではできなくなってきました。
それと相前後して、寺院や公営の斎場、民間のホールができ、一層自宅葬が減ってきました。
また、地域の事情で、葬儀のあり方も時代に合わせてどんどん変わっていきます。
直葬の増加に見る価値観の変化
通夜や告別式などの儀式をしないで火葬する「直葬」。
かつては大学の先生など「人間は死んだら終わり。何もしなくていい」と考えるような知識階級がよく希望されていました。
あとは身寄りがなく、孤独死されたような場合です。
でもいまはごく普通の人が直葬を選ぶ。お金がないからではなく。
亡くなった方も高齢で、葬儀をやっても会葬者がいないからという場合も多くありますが、葬儀に対して価値を見いだせない方が増えているんです。
直葬でも、自宅に連れ帰って三日間、思い出話をしていたりすれば、しっかりお別れができていますから、火葬場で素直に「さようなら」と告げてお見送りできます。
ところが一般葬であっても味気ない葬儀では、ちゃんとお別れができていない。
「お葬式って、なんだか訳のわかんないうちに終わるよね」という感覚だけが残って、グリーフも深くなってしまいます。
十分なお別れができているかどうかで、葬儀の印象や意味合いが大きく違ってくるんですね。
紙の棺で森の一部になる
燃焼時間が短い紙の棺ならCO2も減らせますし、木材の伐採も抑えられる。汚染物質も出ません。
しかも棺の売り上げの一部は植林活動や森林保全活動に寄付されます。
味気ない葬儀ばかり体験していては、直葬でいいじゃないかと考えるのは当然です。
そんな流れをなんとか食い止めたいと、その人らしさを表現した葬儀やエコ葬儀を提案してきました。
心のこもった温かい葬儀がやはり必要なんだということを発信し続けることが、地域とのつながりを太くし、日本の葬送文化を守っていくことになると思っています。